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2015年03月26日

はなむけの言葉


卒業生・修了生の皆さんは、今、授与された卒業証書や修了証書の重みを、きっと深く受け止めておられることと思います。皆さんが、入学当初から「なりたい自分像」を模索し、目標に向かって努力した学生生活の二年間や三年間の喜びや哀しみ、怒り、楽しみなど、また、それを支えていただいた多くの方々の熱い思いが込められた証書であり、皆さんにとっては、かけがえのない誇りそのものでしょう。

皆さんは、学生生活の中で、日々の学びを基にして、ボランティア活動等様々な活動を通して、色々なことに気付かれたことでしょう。その「気付き」が、皆さんの成長の証なのです。
ある学生が、次のように伝えてくれました。「ありがとう」と言われたいためにしているのではないけれど、この言葉が私を嬉しくさせる。この言葉の持つ力はすごい。大切にしたいと思う。と。この学生の中で、感謝の心が他者を喜ばせるだけでなく、自らも幸せになるという優しさや他者への思いが、自然に育まれていると嬉しく思いました。

また、授業の取り組みのなかで学生たちのあるグループが、「それでも生きていく」と題して、次のような詩を作りました。

小さい頃から一人ぼっちで ご飯も一人で食べる毎日 パパには叩かれ ママ知らんぷり 居場所がなくて泣いてた毎日 正直何度も死にたくなった 生きる意味さえ見失ってた でも僕は負けずに 必死で生きてきた そんな僕を認めてくれる人も 周りにはたくさんいたよ 一人じゃない 僕がパパになったら 子どもを愛し 同じ思いを絶対させない 誓う 今までの経験をバネに 生きていく

これは厳しい親子関係にある子どもたちへの励ましのメッセージとなっています。
このように、身近なことから、気付いたことを他人事とはせずに「なぜだろう」と考え、自分を、あるいは他者を励ますすべを考えて行動する。これからも、本学で学んだことを肥やしとして豊かな人間性を培い、「気付き」「考え」そして「行動する」真の教養人として、社会に対して良いインパクトを与えてもらいたいと願っています。

ところで、これから皆さんの進む道は、正に、温水プールから大海原に飛び込むようなもので、監視員もいない、サメに襲われるかもしれない、予期せぬ困難に遭遇することでしょう。でもその困難こそ、自分を見つめ直し成功するチャンスだと捉えて、本気で、真剣に、力を尽くしていただきたいと思います。一生懸命にやれば、必ず誰かが見てくれています。めげないでください。
しかし、一人の人間には限界があり、一人きりで全てのことに結果を出せる時代ではないでしょう。自分を信頼してくれる仲間をつくること、また、そういう仲間が必ずいることを信じて、人の輪を広げていってほしいのです。

本日の修了生である専攻科福祉専攻十二期生は、自分たちの修了論文集を、「音」と命名しました。それぞれ異なる音をもつ学生一人ひとりが、他者と音を重ね、ある時は不協和音を出しながらも、同じ目標に向かって学びを進め、試練の壁を、素晴らしいハーモニーで共に乗り越えました。これからも、人生経験や生きがいなどそれぞれ異なる「音」を奏でる他者と、自らの持ち味を活かした独自の「音」を重ね合わせながら、社会の中で、互いに融け合う協和音を奏でていただきたいと思います。

結びに、卒業・修了される皆さん、奈良佐保短期大学で過ごした日々が、皆さんにとっていい思い出であり、それが誇りや勇気の源となって、ありのままの自分を大切にして、謙虚さを忘れず、様々な人と良い出会いを重ねて、自分のため、また人のために、悔いのない人生を歩まれますことを、重ねて心から願い、はなむけの言葉といたします。

(式辞より抜粋)