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2014年04月10日

「褒めてあげたい自分」にむけて


満開の桜に迎えられて入学された皆さん。皆さんが大学に進学された理由は何でしよう。ほとんどの人が、保育士や幼稚園教諭、社会福祉士、栄養士、介護福祉士などの専門職として、あるいはコミュニケーション能力とビジネスの実務能力を身につけた実業家として、2年後に社会で働くという強い目的意識をもって本学に入学してこられたことでしょう。

しかし入学したからといって、その目的が必ず達成されるものではありません。

専門職の資格を得るには、国が必要と定めた科目を学び修得しなければなりません。修得するとは、習い覚えて自分の身につけることです。卒業するには、これらの科目以外に卒業に必要な科目の単位も修めなければなりません。

ピアノが弾けない、魚を調理したことがない、食事や入浴、排泄など、日常生活の介助をしたことがないなど、それぞれの専門職として必要とされる技術や経験が十分でなく、単位が取れるのだろうかと不安を抱く人もいるでしょう。しかし不安こそが皆さん一人ひとりの出発点なのです。まだ始まっていないことからくる不安は誰もが感じることであり、能力とは関係のないものなのです。

分からないものに飛び込むのが学びのスタートであり、学ぶことで分からなかったことが分かってくる。見えなかったものが見えてくる。そして、様々な問題に気づき、自ら考え、行動する。それが大学における学び方だと言われています。
自分が目指した将来像に向けて必ず実現してみせるという強い意志が、自分の能力を引き出し、その将来像を可能にする原動力になるのです。

いま本学には中国やベトナムからの留学生が、生活未来科食物栄養コースで学んでいます。日本語を十分に使いこなせない中でも、日本人学生とともに栄養士の資格を取るために努力しています。
2年あれば、皆さんが目指す専門職に必要とされる知識や技術などの基礎力は身につけることができます。

大学生活は人生の中で一番自由な時を過ごすことができると言われています。そこには落とし穴があります。遊びたい、楽をしたいと囁く別の自分が現れて、その誘惑に負けてしまうことが往々にして起こります。それをどのようにコントロールするかが、皆さんに与えられた試練であり、他人とではなく、自分との戦いなのです。人間は弱い生き物です。しかしその弱さを克服するために、人間には知恵が与えられているのです。自分の夢を実現させるために、その知恵となる学びを、今、始めようとしていることを、しっかり胸に止めていただきたいと思います。

一方、将来がどのようになるのか見えないで、何をしたらいいのか分からないなど、自分の道を決めかねて、なんとなく入学した人もいるのではないでしょうか。
大丈夫です。私たちと一緒に考えていきましょう。そして、自分の道を自分で見つけ出してください。

人生では、孤独や不遇、失敗などに見舞われることがあります。それを乗り越え、次へのチャレンジをするエネルギーを身につけること、すなわち「生き方」を学ぶことも大学教育の大きな目的です。他者との関わりの中で生きることは人間にとって大切なことです。周りを見てください。きっとあなたが必要としていた人、また、あなたを必要としている人が見えてくるはずです。あなたが、自分のことを何でも話せる人と出会うことを期待しています。その出会いを始めの一歩として豊かな人間関係を築き、人の輪を広げていってください。
加えて、多くの人の支援があって、あなたが大学で学ぶことができていることも忘れないでください。そして、社会の一員として、今後、自分がどのような役割を果たしていくことができるのかを考えることが、これからの課題でもあります。

さて、今年度から、「奈良の伝統行事や伝統工芸」「奈良の食と文化」「奈良とお茶」など、奈良に関する科目を基礎教養科目として取り入れました。これらの科目を通して、奈良佐保短期大学が位置する「奈良」を、様々な視点から学び理解を深めて、奈良で学んだ学生として、1300年の歴史がある奈良について、誇りを持って人に語っていただきたいと思います。

結びに、本学では学生一人ひとりを「ほっとかない」を合言葉に、教職員が心を一つにして、教育や学生生活の両面できめ細かい教育活動を実施しています。
アットホームな雰囲気の中で、皆さんが、ありのままの自分を認め、自分を信じて、人や自然、未知なるものとの出会いを楽しみながら、豊かな感性や知性を育み、2年後に、「褒めてあげたい自分」とともに巣立っていかれることを期待して、お祝いの言葉といたします。

(入学式式辞より抜粋)