サホの人。

卒業生インタビュー Interview

卒業生vol.6「幼稚園教諭 山本 功平さん 幼児教育科 2006年卒業」

現在のお仕事について聞かせてください。

僕はいま幼稚園で働いています。といってもクラスの担任しているわけではなくて、「特別支援加配」という形で勤めています。僕の働く幼稚園は2年保育で、クラスには幼児が30人ほどいて、先生がひとりなんですが、クラスのなかには、気になるこどもが何人かいるんです。僕はその、気になる子、例えば自閉症だったり身体に障がいがあったり、そういうこどもを主に担当しています。
今は幼稚園で「特別支援加配」という形で勤めていますが、大学を卒業して二年間は知的障がい者授産施設で働いていました。「作業所」って知っていますか。知的障がい者の方も、皆さんと同じように学校を卒業して就職をするわけですが、その仕事の訓練をする場所のことです。
僕は、いま障がいを持つこどもを保育できているのは、その前に知的障がい者施設で働いた経験があるからだと思っています。その経験がなかったら細かいところまでみることができなかったと思う。今の職場は、自分の経験が活かされていると思っています。

苦労していることはありますか。

あるこどもとどういうふうに関わったらいいのかっていうのを先生同士で話すことがあります。そのなかで、自分の保育の理想とほかの先生の理想とがぶつかることがあります。これはしんどい、苦しいですね。
こういう仕事をしている方は、どなたも保育観を持っているんです。そしてそれはどの方もなかなか曲げることができない、大切なものなんです。自分の保育について知ってほしい、僕の考えはこうだ、私の考えはこうだ、自分の考えを共有したいという思いを、皆持っています。
保育について話していくなかで、これは自分とは違うなっていう考えもたまにあります。逆に、自分の考えが相手に分かってもらえないこともある。それは悔しいことですね。もちろん、互いに保育観をぶつけ合うのは、いい面もあります。いろいろ吸収できるし。自分が悪い部分が見えたり、自分はまだまだだなって思ったりすることもあります。こうやって互いに話し合っていくのは、苦しくもあり、楽しくもありっていうところです。

幼稚園では保護者の方との関わりもありますね。

保護者の方には、こどものどんな細かいことでも伝えたいと思っています。例えば、今その子が頑張っていることがあるなら、その結果を少しずつ。例えば、昨日はトイレに失敗しちゃいましたけど今日は自分からトイレって言ってくれましたよっていうこととか。もちろん悪いこともあるかもしれない、例えばけんかをしてしまったとか、でも今日はこんないいことがありましたよって。
会話のなかでこどもの頑張りを保護者に伝えられれば、幼稚園の二年間という短い期間のなかで、その分、保護者やこどもと距離を縮めることができると思っています。だから、自分が気づいたことはできるだけ保護者に伝えるようにしています。そういうことで、ご家族も、言いにくかったことも言って下さるようになります。
それに、こどものそういうことを伝えると、お父さんもお母さんも、めっちゃいい顔をしはるんです。こどものいろいろな表情に、先生も親も一緒に嬉しくなったり悲しくなったり。それはとても大切なことだと思っています。

知的障がい者授産施設での仕事はどのようなものなのですか。

法律が変わったのは知っていますか。僕の勤めていた施設は、就労支援型と生活介護型とがあるんですけど、そのなかで僕は生活介護型、重度の障がいをお持ちの方々と一緒に仕事をしていました。一緒に花を育てたり食事を作ったり、軽作業が中心です。僕は保育士としての知識があったから、利用者の方が無理なく描く事ができる絵を描いたりとか。指先を使うと脳の刺激になるからって、少し勉強してね。法律が施行されてから探り探り、試しながらやっていたんです。やらなければ何も始まらないって思って。
これは僕の考えなのですけど、仕事は楽しまなあかん。その利用者だけではなく、自分が楽しくないと。それは一般職で働くのであっても幼稚園や保育所で働くとしても同じです。もちろん楽しいだけではなく、例えば間違っていることは厳しく指摘する。障がい者であってもなくても。あかんことはあかんってね。

これまで印象に残ったエピソードはありますか。

これは、知的障がい者施設でも幼稚園でも一緒だと思うんですけど、自分から積極的にいくことができないこどもや利用者さんっていうのはいらっしゃると思うんです。自分から心を開く事ができなかったり、自分から話しかけることができなかったり。
僕が働いていた知的障がい者施設にも、そういう利用者さんがおられました。その方は障がいをもっておられ、言葉がうまく出ない方でした。言葉が出る方だったら、こちらからアクションをかければ返ってくるものもあると思うんですけど、言葉が出ないのならそれだけ、細かい部分にも気を配らないといけない。
その方は話ができなかったのですけど、僕はその方には必死に話しかけたり、一緒になにかしようとか言葉をかけたり、ご飯を隣で食べたりしていたんです。最初、その方は、「どっかいけ」「うるさい」っていう表現をされていた。僕はそれにへこみながらも、でもしつこく、相手にからんでいこうと思っていたんです。
半年くらいたったとき、その方がこちらに来てくれるようになった。さっき言ったように、その方は言葉は話せないんですけど、声を発することはできる。その方が自分から僕に声をかけてくれたりしてくれた。最初にその方に話しかけていたときは笑顔もなかったんですけど、半年くらいたつと笑顔も出てきた。それが自分のなかで、本当に嬉しかった。
その方がこちらに向いてくれないって最初にあきらめたらそこで終わりだっただろうし。あきらめたらあかん。そういうことを深く感じました。

保育者をめざす皆さんにメッセージをお願いします。

ぜひボランティアをしてください。世界が変わります。
僕は学生時代に知的障がい者施設と幼稚園でボランティアをしていました。大学には授業の合間に、空き時間があるんです。その時間を利用していました。
大学に入る前は何の関心もなかったんです。大学に入学してから、たまたま大学の掲示板で自分の家の近くの作業所でボランティアを募集しているのを知って。ノリで行ってみようかなって。ボランティアでもやっとこうか、就職のときにプラスになるかなって。大学で知り合った友達と一緒に行ったんです。そうしたら、本当にすばらしかった。人生が変わりました。
幼稚園へは、実習した幼稚園に「スクールサポーター」として通っていました。僕の幼稚園時代に担任をしておられた先生が今もいらっしゃって、その先生は別の幼稚園に勤めておられるんですけど、その先生が、奈良市の公立幼稚園にはスクールサポーターという制度がある、これをやってみないかっておっしゃってくださったんです。それで、僕もやってみようかなって思って始めたんです。スクールサポーターの仕事は、幼稚園での保育補助、例えばこどもと一緒に遊んだり、こどもを保育する環境作りのお手伝いをしたり。あとペンキを塗ったりとか力仕事とか。
ボランティアって最初は誰でも、ノリとかそういう軽い気持ちかもしれないって思うんです。友達と一緒にボランティアに行くとか。でもそういうので全くかまわないと思うんです。僕が勤めていた知的障がい者施設には、今も2回生や専攻科の学生がボランティアに来ています。もしよかったら、ぜひボランティアに来て下さい。
それから社会人として必要なのは、最低限は気遣い。これは大切だと思いますね。挨拶、礼儀、先を見て、自分がやりますという気持ち。それができないのは働く以前の問題だと思う。そういう気遣いが重要だと思っています。