[GADV]-タンパク質ワールド仮説
(GADV 仮説) 私達人類はどこからきたのか。そして、もしもこの地球上で生命は確かに誕生し、
人類へと進化したのだとしたら、どのような経過を経て生まれ出てきたのか。また、
生命は極めて小さな確率の極めて希な現象の中で偶然の結果としてこの地球上に生まれた
のだろうか。それとも生命は起こるべくして起こった必然の結果として生まれたのかなど
生命の起源に関する議論は古くから多くの人によって行われてきた人類にとって最も大きな
関心事の一つである。
また一方で、生命の起源に関する問題には、遺伝子や遺伝暗号、そして、
遺伝情報の翻訳システムやタンパク質の基本的な構造とその機能に関する本質的
で重要な問題が含まれていることも事実である。
したがって、私達は最初から生命の起源の問題に取り組もうと思って研究を始めた
わけではなかったが、生命の起源研究に含まれる重要な側面に注目し、生命の起源に関する
解決が困難とも思えるこの問題に取り組むこととした。その具体的なきっかけは遺伝子の
起源に関する研究であったが、1990年頃以降、結果として生命の起源を解決するための
作業に真正面から取り組むこととなった。下で、記載するように新規遺伝子の生成に
関する考えに到達した後、続いて引きずり込まれるように遺伝暗号の起源に取り組むこと
となった。その後、さらにタンパク質の起源や代謝経路の起源に取り組むことに
なったのである。
私達はこうして遺伝子の起源や遺伝暗号の起源、タンパク質の起源などについて
の新しい考えをそれぞれ提唱することができた。そして、私は最も初期の遺伝暗号が
Gly、Ala、Asp、Valという構造の簡単な4 種のアミノ酸をコードするGNC から始まる
のではとの思いを強くしていたある時に、生命の起源に関する[GADV]-タンパク質の
擬似複製に基礎を置いた[GADV]-タンパク質ワールド仮説(略して、GADV仮説)に
思い当たったのである。
(参照) 1.「GADV仮説 −生命起源を問い直す−」
京都大学学術出版会, 池原健二 著 (2006年4月出版).
2.Possible Steps to the Emergence of Life: The [GADV]-Protein World Hypothesis.
Kenji Ikehara, The Chemical Record, Vol. 5, Issue 2, 107-118 (2005).
1.1.2. 遺伝子の起源
GC-NSF(a) 新規遺伝子生成仮説 地球上のどこかで、今でも新たな遺伝子が生み出されているのだろうか。この
ような質問は、突飛で奇異に感じる読者も多いかも知れない。しかし、地上、地中、
水中、空中、高温、低温など様々な環境に細菌や原生生物などの微生物から動植物に
至るまで多様な生物が棲息している。現在の地球上のこのような状況を見ると生命が
その都度出会う新たな環境に適応するため、長い期間に亘って新たな遺伝子を生み出し
てきたし、生み出しているに違いがないと思われる。
そこで、私達はまず以下に示した3つの条件をもとに、「もし仮に今でも全く新たな
遺伝子が形成されているとすれば何処なのか」を本気になって考えてみることとした。
1) 一定範囲以上の塩基配列上にストップコドンのでないノンストップフレーム(NSF)
が存在すること。
2) 新たに形成される仮想タンパク質が水溶液中で球状構造を採るための6つの条件
(疎水性/親水性度、a-へリックス、b-シート、b-ターン構造形成能、酸性アミノ酸含量
および塩基性アミノ酸含量)を満足すること。
3)新たに形成されるタンパク質の主鎖の構造は新たに出会う基質とある程度の柔軟性
を持って対応できるよう現存のタンパク質よりはいくらか柔らかな構造をとり得るもので
あること。
その結果、GC含量の高い遺伝子のアンチセンス鎖上の配列(これを私達は、GC-NSF(a)
と呼んでいる)から 新規遺伝子が生まれているというGC-NSF(a)新規遺伝子生成仮説を
提唱している。
(参照)
1.A Possible Origin of Newly-Born Bacterial Genes: Significance of GC-rich
nonstop frame on antisense strand. Kenji Ikehara, Fumiko Amada, Shigeko
Yoshida, Yuji Mikata and Akira Tanaka, Nucl. Acids Res., Vol. 24, 4249-4255
(1996).
2. Unusually Biased Nucleotide Sequences on Sense Strands of Flavobacterium sp.
Genes Produce Nonstop Frames on the Corresponding Antisense Strands.
Kenji Ikehara, and Eriko Okazawa, Nucleic Acids Res., Vol. 21, No. 9, 2193-2199
(1993).
1.1.3. 遺伝暗号の起源
GNC-SNS 原始遺伝暗号仮説 生命活動の源は当然のことながら遺伝子と遺伝子がコードするタンパク質にある。その
遺伝子の働きは遺伝暗号の仲介を受けてタンパク質の合成となって現れ、そして初めて
機能する。しかし、これまで遺伝暗号は単に遺伝子上の塩基配列(3つ組み塩基:トリプレット)
とタンパク質のアミノ酸(配列)の対応関係を示したものとだけ考える傾向が強かった。しかし、
遺伝暗号は遺伝子とタンパク質を結びつけるもの、即ち、遺伝暗号の起源の解明は、直接、
遺伝子とタンパク質の起源の解明につながる可能性を持った、生命の基本システムの根幹を
なすという意味で極めて重要な(恐らく、遺伝子やタンパク質よりも重要な)要素の一つ
であると私は考えている。
そして、私達が進めた遺伝暗号の起源に関する解析の結果として、GNC原初遺伝暗号を起源
とし、SNS原始遺伝暗号を経て、現在の普遍遺伝暗号に達したというGNC-SNS原始遺伝暗号仮説を
提唱するに至っている。
(参照)
1. A Novel Theory on the Origin of the Genetic Code: A GNC-SNS Hypothesis.
Kenji Ikehara, Yoko Omori, Rieko Arai and Akiko Hirose, J. Mol. Evol., Vol. 54,
530-538 (2002).
2. Origin and Evolutionary Process of the Genetic Code. Kenji Ikehara and Yuka Niihara,
Current Medicinal Chemistry (CMC) Vol. 14, No. 30, 3221-3231 (2007).
1.1.4. タンパク質の起源
タンパク質 0 次構造仮説
全く新規なタンパク質がどのように生み出されるのかについては、これまでよく分かって
いなかった。しかし、私達がとうたつした遺伝子や遺伝暗号の起源に関する新しい考えに
基づいて考えるとそれまでに存在しなかったタンパク質のどれとも類似しない新規な
タンパク質は、ランダムにつないでも水溶性で球状の構造を高い確率で採り得る特別な
アミノ酸組成が鍵を握っているとの考えに到達した。この考えを私達はタンパク質の0次
構造仮説と呼んでおり、現在、論文として公表するための準備を進めているところである。
しかし、以下の参考論文に示すように、私達が主張するタンパク質の0次構造仮説についても、
これまですでにいくつかの論文や総説の中で記載している。
(参照)
1. Origins of Gene, Genetic Code, Protein and Life: comprehensive view of life
systems from a GNC-SNS primitive genetic code hypothesis (a modified English
version of the paper appeared in Viva Origino, Vol. 29, 66-85 (2001)) Kenji
Ikehara, J. Biosci., Vol. 27, 165-186 (2002).
2. Catalytic Activities of [GADV]-Peptides: Formation and establishment of
[GADV]-protein world for the emergence of life. Takae Oba, Jun Fukushima,
Masako Maruyama, Ryoko Iwamoto and Kenji Ikehara, Olig. Life Evol. Biosph.,
Vol. 35, No. 5, 447-460 (2005).
1.Origin and Evolutionary Process of the Genetic Code. Kenji Ikehara and Yuka Niihara,
Current Medicinal Chemistry (CMC) Vol. 14, No. 30, 3221-3231 (2007).
2. Catalytic Activities of [GADV]-Peptides: Formation and establishment of
[GADV]-protein world for the emergence of life. Takae Oba, Jun Fukushima,
Masako Maruyama, Ryoko Iwamoto and Kenji Ikehara, Olig. Life Evol. Biosph.,
Vol. 35, No. 5, 447-460 (2005).
3. Possible Steps to the Emergence of Life: The [GADV]-Protein World Hypothesis.
Kenji Ikehara, The Chemical Record, Vol. 5, Issue 2, 107-118 (2005).
4. A Novel Theory on the Origin of the Genetic Code: A GNC-SNS Hypothesis.
Kenji Ikehara, Yoko Omori, Rieko Arai and Akiko Hirose, J. Mol. Evol., Vol. 54,
530-538 (2002).
5. Origins of Gene, Genetic Code, Protein and Life: comprehensive view of life
systems from a GNC-SNS primitive genetic code hypothesis (a modified English
version of the paper appeared in Viva Origino, Vol. 29, 66-85 (2001)) Kenji
Ikehara, J. Biosci., Vol. 27, 165-186 (2002).
6. A Possible Origin of Newly-Born Bacterial Genes: Significance of GC-rich
nonstop frame on antisense strand. Kenji Ikehara, Fumiko Amada, Shigeko
Yoshida, Yuji Mikata and Akira Tanaka, Nucl. Acids Res., Vol. 24, 4249-4255
(1996).
7. Unusually Biased Nucleotide Sequences on Sense Strands of Flavobacterium sp.
Genes Produce Nonstop Frames on the Corresponding Antisense Strands.
Kenji Ikehara, and Eriko Okazawa, Nucleic Acids Res., Vol. 21, No. 9, 2193-2199
(1993).
3.4. その他
1. 生命の起原と遺伝暗号の成立 ー単純な暗号から複雑な暗号へー
"ESTABLISHMENT OF GNC CODE LEADING TO THE EMERGENCE OF LIFE)
-From simple genetic code to more complex code-" 池原健二、Viva Origino, Vol. 35, No. 4, 104-109 (2007).
2. Mechanism for Creation of “Original Ancestor Genes”. Kenji Ikehara,
J. Biol. Macromol., Vol. 5, No. 2, 21-30 (2005).
3. Simulation of Gene Evolution (evidence for GC-NSF(a) hypothesis
on the origin of genes). Kenji Ikehara, Viva Origino Vol. 31, No. 3, 201-214 (2003).
4.「遺伝子、遺伝暗号、蛋白質および生命の起原」(GNC-SNS原始遺伝暗号仮説から見
た生命の基本システム) 池原健二、Viva Origino, Vol. 29, 66-85 (2001).
5.「生命の起源についてのRNAワールド仮説は正しいか?(生命は蛋白質ワール
ドから生まれた!)」池原健二、生物科学, Vol. 51, 43-53 (1999).
6. A Possible Evolutionary Pathway of the Genetic Code deduced from the SNS
Hypothesis. K. Ikehara, Viva Origino, Vol. 26, No. 4, 311-320 (1998).
7. 「遺伝暗号の起源と進化(新説SNS仮説に基づいて)」池原健二、生物科学,
Vol. 50, 44-54 (1998).
8. SNS Hypothesis on the Origin of the Genetic Code. K. Ikehara, and S.
Yoshida, Viva Origino, Vol. 26, No. 4, 301-310 (1998).
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