2009年08月10日 月曜日
チャンスを掴む
先月けいはんなプラザで「世界同時不況時における企業の特許」という講演を聴く機会を得た。他の講演を聴く予定で出かけたが、この講演が先にあり、難しいテーマだし経営経済には弱いし講演者は大阪工業大学教授山崎攻氏で工学博士というので、気が向かないといっては失礼だけれど、そんな気持ちで聞くことにした。ところが、このお話がたいそう面白かったのである。
講演の主旨は、百年に一度と言われる世界的不況時に企業が取るべき戦略は何か、ということで、その戦略とは、事業と技術開発、そして知的財産が三位一体で新しい製品を生み出し市場を攻略していくというものである。松下幸之助の言葉「不況、また良し」を引用され、不況時こそ技術開発のチャンスであり、新しい技術は知的財産として蓄積され、事業を発展させる牽引力になることを、データを分析して示された。
不況は<受注の減少→稼働率の低下→事業の縮小>、あるいは、<売れ筋商品の市場が拡大→普及率が高まる→その商品がコモディティ(日常品)化して市場が飽和する→値崩れ>といった経緯をたどり、経済活動が低下する。前者は自動車産業,後者はテレビや冷蔵庫など電化製品の例を当てはめると、やや納得できる。そうした時、「必死になって、斬新な商品、まだ世にないもの、画期的な工法、製品を考える」ことによって、技術の開発革新→技術の進歩→新商品の開発、となって再び景気が盛り返すというサイクルがあり、経験的にも不況になると技術が進むと述べられた。ルーチン化した業務から解放される不況時こそ、新技術開発のチャンスなのである。野球では「ピンチの後にチャンスあり」というと強調された。
この技術開発を可視化できるものとしてパテントがあり、企業の特許数の累計と売上高、その年の特許出願件数と売上高などを指数化して、事業性を示す売上指数、将来性を示す出願指数の相関を経年的に図表化して、その企業の動向と将来性を示された。
お話を聞いて、思わず知らず危機に面している大学・短期大学の状況に重ね合わせてしまう。大学の危機は18歳人口の減少によるところが大きいが、しかし大学経営も企業の三位一体の戦略を考えるべきではないかと思った―教育とアイデアと知的財産とで。図1は、企業の経営戦略策定のツールとして利用される製品のポートフォリオで、市場成長率と市場占有率とがバランスが取れて高まらなければ、企業の発展はない。これに倣って、大学のポートフォリオを試作してみようとしたが、さて教育を可視化するには?
先生方の研究発表論文数や科学研究費なら数値で表されるが、それが学生増に、即、つながる訳ではないであろう。数値で測れないが可視化できる動きとして、大学の活動、教育研究での新たなアイデア、地域での活動の展開等々が考えられる。それを成長率に、学生定員充足率を市場占有率に置換してみると図2のようになった。企業と同様、Ⅰは問題児。動きは活発でも学生が集まらない?これは大きな反省と検討課題を抱えている。Ⅱは、動きも活発で学生も集まる人気大学。Ⅲは低迷。動きもなければ学生も集まらない。Ⅳは、とくに目立った活動をしなくても、蓄積された知的財産で学生が集まる大学。伝統ある有名大学がこれに当たるだろう。
さて、わが奈良佐保短期大学は、戦略としてどの位置を狙うのか?当然Ⅱであろう。それには、可視的な活動、新しいアイデアのもとに教育活動を活発化させることである。われわれは、危機を叫んでいるが、それを乗り切ろうと、本気でアイデアを出し合っているか?常に新しい活動をプロモーションしているだろうか?大学の活性化にも、新しいアイデアが必要なのだと、つくづく思う。(なお、参考までに、大学の可視的動きとして、大学・学部・学科新設のデータを添付した。)
木 村 都
| 図1 商品のポートフォリオ | 図2 大学のポートフォリオ | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 高 市 場 成 長 率 低 |
Question Mark (問題児) |
Star (花形) | 大 可 視 的 な 活 動 小 |
I | II | |
| Dog (負け犬) |
Cash Cow (売れ筋) | III | IV | |||
| 低--相対市場占有率--高 | 低--学生定員充足率--高 | |||||
(*配布資料より作成)
| 2002年度 | 2009年度 | 2010年度 | |||||||
| 大学 | 短期大学 | 学部・学科 | 大学 | 短期大学 | 学部・学科 | 大学 | 短期大学 | 学部・学科 | |
| 医療・看護・健康 | 9 | - | 20 | 8 | 2 | 21 | 4 | - | 13 |
| 幼児・教育・保育 | - | - | 5 | 3 | 2 | 22 | 1 | - | 5 |
| 経営・ビジネス・観光 | 2 | - | 2 | - | - | 14 | 1 | - | 6 |
| 教養・国際・言語 | 2 | 4 | - | - | 17 | - | - | 12 | |
| アーツ・ビジュアル | 1 | - | 9 | - | - | 4 | 1 | - | 6 |
| 心理 | - | - | 11 | - | - | 6 | - | - | 4 |
| 情報・工学 | 1 | - | 9 | - | - | 21 | - | - | 工学:5 情報:2 |
| その他・生活 | 1 | - | 3 | - | - | スポーツ:5 その他:17 |
2 | - | - |
| 合計 | 16 | 0 | 大学:35 短期大学:7 |
11 | 4 | 大学:121 短期大学:10 |
9 | 0 | 大学:61 |
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