2009年08月31日 月曜日
「文明の生態史観」を読む
梅棹忠夫による「文明の生態史観」を今、読み直しています。現代の世界情勢を観るのに、この梅棹の50年前の見方は、未だに通用するように思います。旧世界を中心とした話なので、今をときめく、BRICsのうち、ブラジルのことは出てきていませんが、中国、インド、ロシアのことは言及されています。旧世界を生態史的に第一地域と第二地域に分け、第一地域は西の端のヨーロッパと極東の日本、第二地域は、その間にある広大な地域で、中国、東南アジア、インド、ロシア、周辺のイスラム諸国などがあるとしています。第一地域では、封建制から高度な資本主義体制が発達し、第二地域では、封建制は発達せず、専制君主か植民地体制から未成熟な資本主義体制、あるいは社会主義体制に替わってきていると捉えます。これらの歴史的変遷、共同体の機能を生物の進化史観あるいは生態学的史観(生態史観)から説明しようとしたものです。
第一地域は温帯中緯度にあり、適度の雨量と生産力の高い土地があります。第二地域には大陸の東北から西南斜めに横断する巨大な乾燥地帯が存在します。そこでは巨大な帝国ができては壊れ、壊れてはまたできたという破壊と暴力の歴史があり、社会体制の発達が遅れ、第一地域の植民地となってきました。
第二次世界大戦後、日本はドイツと同じく目覚しい復興を遂げたわけですが、第二地域では、ソ連、中国、インド、パキスタン、ユーゴスラビアからモロッコまでが殖民地体制、専制体制から脱却、勃興してきました。それから50年経った今、この第二地域が世界の台風の目となろうとしています。中国、インド、ロシアは、西ヨーロッパと日本の繁栄を凌駕し、あと十年もすれば、世界の富はこれらの国々に集中することが予想されています。第二地域のイスラム圏では、テロと民族紛争の泥沼と化していますが、いわゆるアジア圏は、EUと同様、一体化する時代がくるとも予想されます。
このような世界の情勢の中で教育問題を考えますと、日本における短期高等教育、つまり短期大学は、戦後のわが国の高等教育の普遍化に使命を果たしましたが、第二地域、特に中国、インド、東南アジアにおける高等教育の普及に、今後重要な役割をもつようになるのではないでしょうか。いまアジア圏では、西ヨーロッパや北米から大学を続々と招致して国力を固めていますが、日本の高度な文化や技術はまだその影響力をもち、世界で注目されてきている日本のアニメ、マンガ、健康食、そして第二地域に進出する日本企業など、日本語はアジアの多くの国で教えられ、かつ日本語教育は今後求められてくるのではないでしょうか。わが国が留学生30万人計画を謳うのも、これらの情勢を見越して、日本に外国人を受け入れ、高度な日本文化を世界に発信していこうとすることではないでしょうか。
2009年08月21日 金曜日
「聖地寧波~日本仏教1300年の源流~」
奈良国立博物館で開催している「聖地寧波~日本仏教1300年の源流~」を見てきました。日本と中国の交流の歴史を顧みるとき、中国浙江省の「寧波(ニンポー)」という港町が果たした役割は非常に大きいということです。遣唐使の時代、比叡山で天台宗を開いた最澄は、遣唐使船に乗って当時明州と呼ばれた寧波に着岸していますし、国家間の交流が途絶えてからも、多くの日本の僧が仏教を学ぶために、商船に乗って中国に渡り、寧波に至っています。奈良時代には、日本の仏教に大きな影響を与えた鑑真和上もまた4回に及ぶ日本への渡航の失敗のときに、寧波に滞在したということです。鎌倉時代に禅を移入した栄西や道元なども寧波を訪れたそうです。その後も日本から中国へ上陸する港として寧波は重要な位置を占めていました。
今回の展示においては、五百羅漢図がなかなかの圧巻でした。五百羅漢は、寧波近郊にある天台山の石橋に姿をあらわすと信じられていた羅漢(仏教の修行を極めた高僧)だそうです。南宋時代に作られ、もともとは百幅の壮大なセットであったものです。一幅一幅に、羅漢達の生活が描かれていて、神通力で奇跡を起こしたり、法要を営んでいたり、と興味が惹きつけられるものばかりでした(ポスター参照)。
中国と日本との関係は、近代において、不幸な時代もありました。しかし、今や中国はインドなどとともに急激に発展しています。近い将来にアジアは世界の経済の中心に位置することになることは明白です。中国、インドなどとの1300年の交流の歴史をもとに、アジアの発展に日本は貢献すべきであり、本学もそのほんの一端にでも関わることができればと思っているところです。
2009年08月15日 土曜日
「大学における社会人基礎力育成~関西からの発信~」が成功裡に開催
8月11日(火)、大阪市中央公会堂において、「大学における社会人基礎力育成~関西からの発信~」が、約250名もの聴衆のもとに開催されました。これは今年3月、経済産業省の主催で全国の40大学が参加した「社会人基礎力育成グランプリ2009」において、大阪工業大学が大賞、関西学院大学が準大賞、奈良佐保短期大学が準大賞と会場特別賞と、関西の3大学が上位受賞を独占したことから、3大学が集まって、関西で報告会とシンポジウムをしようという企画で開催されたわけです。会はまず基調講演が2題あり、経済産業省の壷井秀一氏による「今日からはじめる"社会人基礎力"の育成と評価の実践~社会でいきいきと働く若者の育成を目指して~」と株式会社堀場製作所の若林聡氏による「企業から見た社会人基礎力の必要性」。壷井氏は、経産省が社会人基礎力育成に力を入れる主意と経緯、現在のプロジェクトの状況について話をされ(写真1)、若林氏は堀場製作所の例を中心に企業はどのような人材を求めているのかを語られ、グローバル化する世界にあって必要とされる基礎力の一例として、日本人が自国語とその表現をしっかり身につけることを強調されました。
第2部として、3大学の学生チームが、グランプリ決勝大会におけるプレゼンテーションを披露しました。大阪工業大学「人工衛星の開発を通じた社会人基礎力の育成」、関西学院大学「宝塚ループバスPROJECT」、そして奈良佐保短期大学「人と関わることによる成長~介護現場の実践を通して~」でした。"ものづくり"、"ことづくり"、"ひとづくり"にそれぞれが挑戦した報告で、奇しくも社会人として必要な三拍子が揃ったのでした。とりわけ、会場特別賞を受賞した本学の発表は、決勝大会が東京で行われたため、今回初めて発表を聞かれる方がほとんどで、会場に再び感動の渦を巻き起こしたようです(写真2)。
第3部として、関西学院大学の定藤繁樹副学長のモデレートにより、学生チームを指導した、大阪工業大学の西川出氏、奈良佐保短期大学の奥田真紀子氏、関西学院大学の松本清一郎氏に、経済産業省の壷井氏と大阪商工会議所の廣田雅美氏がパネリストとして加わり、シンポジウムが行われました(写真3)。大学は社会人基礎力育成にどのような努力をしているか、経済界は若い人に何を期待しているか、来年度はどのような計画をもっているのかなどについて、それぞれの立場から発言されました。関西に社会人基礎力育成の土壌があるかどうかは、今回のグランプリ受賞だけでは明らかにすることはできませんが、受賞3大学がこのように結集できる力をもつ関西から発信していく必要を皆が感じたことだろうと思います。
2009年08月10日 月曜日
「2009ユネスコ東アジア子ども芸術祭イン奈良」
「
モンゴルの子供達による、「民族肩舞踊」、伝統的長唄「美しい馬」、軽業「2羽の白鳥の伝説」など、とても元気さが感じられるものでした。大韓民国の子供達の舞踊「レンギョウの道に沿って」は早春に咲く黄色いレンギョウの花を連想させるかわいい舞踊でした。中華人民共和国の四川省成都市子ども芸術団によるオペラダンス「遊び」は、中国の伝統的な文化と芸術である舞踊と歌に加え、武芸も含まれる、色彩豊かな衣装による楽しいものでした(写真3)。次に日本の曽爾村立曽爾中学校の生徒による獅子舞は地域の神社や各家のご神体の前でする伝統的獅子舞で、太鼓のリズムと良く合った力強い獅子舞でした。香港のダヴインチアカデミーの生徒達による歌唱とピアノ演奏は、日本の歌も含めた内容で、会場の皆さんも一緒に歌う、楽しいものとなりました。歌と演奏の合間には、先生が英語で、何十年も前にはスラム街であった九龍地区での子供たちの貧しくても逞しい生活の話しをしました。最後の出し物は、マカオ武道協会の子供達による勇ましい「武術演舞」があり、最後は。「南方獅子舞」で締めくくられました。このマカオの獅子舞は、派手な色とユーモラスな踊りで、日本の獅子舞とは異なる趣がありました(写真4)。子どもたちは、翌日からは、奈良女子大学や奈良教育大学の付属学校で交流をするということでした。奈良佐保短期大学の地域こども学科の学生達も参加して、アジアが一つなった交流ができる日がくることを夢見ながら、子供たちの演技に魅入られる午後のひと時でした。





